しろ鹿 脊振の山散歩

かけだし森林インストラクターのぶらぶら山散歩

7月の脊振(昆虫・動物)

今回は前回の続きで小動物、昆虫編です。

まずは鳥…

ソウシチョウ

まあ、これは特定外来種なのですが…

昔中国から観賞用に連れてこられ、いわゆる「篭脱け」して山に定着してしまった鳥です。

春先から美しいさえずりが聞けます。

考えてみれば外来種とはいえ彼らには何の罪もありませんよねえ…

 

エナガ

もうひとつ鳥です。

小っちゃくてかわいらしいエナガたちがヤマガラたちと一緒に飛んできました。

エナガは尾に特徴があります。

ヤマガラ

ヤマガラは鳴き声がシジュウカラによく似ています。

山を歩いているとかなり近づいてくることもありますが、ぎぃー、ぎぃーと警戒の声なので、歓迎はされていないようです。

 

次は昆虫たちです。

アオフキバッタ

アカショウマの葉っぱにフキバッタが止まっていました。

ハネが短くて子供かと思われたりしますが、これが成虫の姿です。

ハネで飛ぶことはできません。

 

ミヤマカワトンボ

林道でしたが、カワトンボの仲間のミヤマカワトンボがコアカソの葉っぱにとまっていました。

ハネの先の方の黒い帯が特徴的です。

脊振は沢が多いのでカワトンボ類がたくさんいます。

 

徒然なるままに…

ヒグラシ

そう、ヒグラシです。

かなかなかなかな…

それにしても木の幹に見事に同化していますね。

 

稜線のオカトラノオの花や周りの葉っぱにはちょうちょがたくさん来ています。

ミドリヒョウモン

ヒメキマダラセセリ

ゴイシシジミ

ゴイシシジミは珍しい蝶ではないようですが、個人的には初めて見ました。

黒い水玉模様が美しいですね。

 

これも稜線の腐葉土の上を歩いている甲虫が…

コクワガタ

オサムシか何かだろうと、よく見てみるとコクワガタのメスが昼間からひとり歩きです。

目がかわいいんですよね。

 

林道沿いのコナラの幹にカナブンが来ています。

樹液が少しだけ出ていたので、夜になるとカブトムシも来るかも…?

カナブン(アオカナブン)

キマワリ

いつもクヌギやコナラの幹をうろうろしているキマワリが葉っぱに乗っておとなしくとまっています。

 

さて、ここ数週間生息場所を確認していたブチサンショウウオです。

ブチサンショウウオ

福岡県では準絶滅危惧種とされています。

まだ幼生なので水の中です。

エラにふわふわが出ていてウーパールーパーみたいでかわいいです。

まあ、ウーパールーパーもメキシコサンショウウオという仲間なんですけどね。

源流部近くの沢の川床は風化花崗岩の砂や岩が多いのでこれに合わせた見事な保護色になっています。

上の画像では3匹います。

わかりますか?

 

こういった今にも消えてしまいそうな生き物たちが細々と生きている脊振山地は、本当に福岡や佐賀の最後に残された自然の宝庫であり最後の砦なので、これをできるだけ長くのこしていきたいものです。

 

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7月の脊振

椎原谷の沢

気が付けばずいぶん更新をさぼってしまっていました(苦笑)

…ちょっと仕事が立て込んで…(言い訳)

とはいえ、脊振にはぼちぼち、いや、毎週出かけていましたのでネタはあります。

先々週には両生類好きの森林インストラクター仲間に脊振のブチサンショウウオを紹介するために下見やらで、脊振山と金山のあたりをうろうろと…

まずは7月中に出会ってきた植物たちです。

 

登山道脇にアカショウマの花が咲いていました。

アカショウマ(ユキノシタ科チダケサシ属)

アカショウマは葉っぱの柄(葉柄)や茎の根元が赤いことからついた名前で花は白色です。

同じ「ショウマ」の名がついているサラシナショウマはキンポウゲ科なので名前は似ていても違う仲間ですね。

 

林道にはウツボグサの花が残っていました。

ウツボグサ(シソ科)

小花の形が武士が背負う「うつぼ」(矢入れ)に似ているので名前が付いたようですが、同じシソ科のタツナミソウなどに似ていて、まさにシソ科という感じです。

漢方の薬草として用いられているそうです。

花も終わりかけなので色も姿も貧弱な感じですね。

 

日当たりの良い稜線や林道沿いにはオカトラノオが花盛りです。

オカトラノオ(サクラソウ科)

花(花序)の形がトラの尾のような形なので…ということのようです。

脊振でみられる「トラノオ」の名がつく草花では他にハルトラノオがありますが、こちらはタデ科なので、これまた名前は似ているけど違う仲間ですね。

他にもシソ科やゴマノハグサ科の「トラノオ」もあるそうです。

サクラソウの仲間(サワトラノオ等々)は花序全体の雰囲気は少し違いますが、小花の花弁が5枚でよく似た感じです。

 

スギの林にはヤブミョウガが咲いています。

ヤブミョウガ(ツユクサ科)

「ミョウガ」の名前は葉っぱが似ているからで、ミョウガやハナミョウガはショウガ科なので、これも違う仲間です。

花や樹木、虫も和名は見た目などで名前が付くので名前が一緒でも種が違うというものが多いですね。

…そういえば、ハナミョウガの花はまだ咲いていないなあ。

 

次は…

オニコナスビ(サクラソウ科)

この花は県内ではもう脊振にしか残っていません。(福岡県RDB 絶滅危惧ⅠB)

以前は那珂川町や東峰村にも自生地がありましたが、すべてダムの底に…

九州では大分県、熊本県にも自生地があるようですが、現在残っているのかは確認されていないようです。

植物が絶滅危惧や絶滅に至るには色々な原因があります。

環境変化、台風・豪雨などによる自生地の崩壊、盗掘…

絶滅危惧種に指定されるとすぐに盗掘と決めつけ、ほかの登山者とトラブルになっている話も聞きますが、盗掘が深刻なのは、咲き姿が美しく高額で売れるエビネ等ラン科の植物やオキナグサ等で、ほとんどは専門業者によるものと言われています。

盗掘はもちろん言語道断ですが、そのほかの理由による絶滅危惧化もすべて人間の責任と考えるべきで、ほかの人ともめている場合ではないものと思います。

逆に脊振にはこのような貴重な宝物が生きていることを知って、大切に残していくことを考えなければいけませんね。

 

ヤマアジサイも咲いていました。

ヤマアジサイ(アジサイ科)

 

稜線の森の足元にヤブコウジの花が咲いています。

ヤブコウジ(サクラソウ科ヤブコウジ属)

 

ヤブコウジは秋に小さな赤い実がかわいくて目立ちますが、花も地味ながらかわいいですね。

一応樹木の仲間(木本)ですが、他の樹木のように大きくなりません。

これもサクラソウの仲間になっています。

各々属が違いますが、見比べると面白いですね。

 

足元に白いプロペラがたくさん落ちていたので見上げると…

テイカカズラ(キョウチクトウ科)

つる性の植物で照葉樹の幹に沿ってどんどん登っていき、日の当たる高い場所に花を咲かせるので、山を歩いていてもなかなか気づきません。

いつも地面に落ちているプロペラのような形の花を見つけて初めて気が付きます。

 

さてさて、夏から秋に向けて実をつけ始めている木々がたくさん見られます。

ホオノキ(モクレン科)の実

朴葉焼きや朴葉みそで有名なホオノキが大きな葉っぱの真ん中にドリアンのような実をつけていました。

 

アブラチャン(クスノキ科)の実

全体に油分が多い木で、種も火をつけるとながく燃え続けるそうです。

脊振では近い仲間のシロモジ、クロモジと共によく見かける樹木です。

 

カラスウリ(ウリ科)の実

林道沿いではカラスウリの実を見かけます。

葉っぱからモミジカラスウリのようです。

秋になるとこの実がオレンジ色に色づきます。

生け花で使われることもありますよね。

食用にはされませんが、薬用には使われるようです。

 

今年はブナの実豊作かな?

ブナの実

稜線のブナの森では実がついている木があります。

ブナは5~7年の周期で豊作の年があり、これはほぼ全国的に同じ時期になるようです。

脊振ではここ数年ブナの実をほとんど見かけませんでしたので、今年は少し期待できそうです。

ただし、豊作年の実はあまり発芽しないらしいので…脊振のブナ林はどうなるのやら?

日本のブナ林は林床にササが多くなかなか発芽しにくく、また人工的に発芽させることも非常に難しいそうです。

 

サワフタギ(ハイノキ科)の実

初夏に白い花を咲かせていたサワフタギも小さな実をたくさんつけています。

脊振の稜線にたくさん見られるサワフタギはおそらく「タンナサワフタギ」かと思います。

ミツバツツジやネジキ、ツゲやリョウブ等の木々に混じってたくさん見られます。

 

今回は7月に見かけた植物たちを紹介しました。

次は虫や小動物たちを紹介しますね。

 

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猛暑の中、涼しい沢道を行く(金山滝川谷)

梅雨明けから続く猛暑の中、木陰と沢の水音を求めて金山へ出かけました。

金山山頂から有明海方面を望む
正面奥にうっすらと雲仙普賢岳

滝川谷の登山口から入山するとスギ林を抜けすぐに大きな滝が現れます。

金山滝川谷の登山道の大滝

登山口付近には少し貧弱なハナイカダの木があります。

ハナイカダ(モチノキ目ハナイカダ科)

ハナイカダは、葉の葉脈から花が咲き、そのまま葉の上に実が付きます。

葉っぱの上に花が乗っている様子から「ハナイカダ」の名前が付いたそうです。

この実がもうしばらくすると黒く色づきなんとも風情のある姿になります。

 

滝川谷は花乱の滝の上流の沢沿いに進む登山道で、その名の通り大小の滝や美しい沢の風景が見られます。

滝川谷は水量も多く気持ちの良い沢が続きます


2週間前には登山口付近だけでしたが、今週は上流の源流部までヤマアジサイの花が咲き誇っています。

ヤマアジサイ(アジサイ科)

おそらく何度も紹介していますが、アジサイは真ん中の小さなつぶつぶが花で、周りの4枚の花弁のようなものは萼片が変化したもので「装飾花」と呼ばれます。

花粉を媒介してくれる虫たちに花をアピールするためのものといわれていて、面白いのは受粉が終わるとこの装飾花は下を向いてしまいます。

 

岩の上にもぞもぞと動くものがいたのでよく見ると…ヘビです。

シマヘビ

アオダイショウが光の加減で真っ黒に見えたのかと思いましたが、調べてみるとシマヘビの黒化型の個体のようです。

シマヘビは比較的臆病で、少しでも人の気配を感じるとすぐに逃げていきます。

毒もないので、子供のころは捕まえてしばらく飼っていたこともあります。

…今は考えられませんが(苦笑)

黒化型とは、変温動物であるヘビが体温を維持するために太陽光から熱を得やすい黒色に体色を変化させた個体ということのようです。

シマヘビはふつうは縦じまの模様なんですけどね。

 

ハンカイソウ(キク科メタカラコウ属)

沢沿いの少し開けた場所にはハンカイソウの花が咲いていました。

1mを超える高さになる大きな花です。

中国古代の楚漢戦争で漢の高祖劉邦の配下の武将「樊噲(はんかい)」に由来するという話もありますが…なんでかなあ?

 

しばらく行くと、昨年から目をつけていたツチアケビが花を咲かせていました。

そう珍しい花でもないのですが、最近は少なくなってきました。

ツチアケビ(ラン科)
左は2週間前の様子

ツチアケビ(ラン科)

ツチアケビはランの仲間で、見ての通り葉緑体がありません。

ギンリョウソウと同じく腐生植物で、菌類(ナラタケ)と共生しています。

それでも花を見るとラン科の気品を主張しているような気がしますね。

秋に真っ赤で大きなバナナのような実をつけるので、これをアケビの実にみたてて「ツチアケビ」と名付けられたようです。

 

実と言えば…

マタタビ(マタタビ科)
左は2週間前の花

先々週には花を咲かせていたマタタビがもう実になりつつあります。

 

さらに沢沿いの道を進みます

涼しげな沢が続きます

ツルアジサイ(アジサイ科)

これは先々週の画像ですが、ツルアジサイが咲いていました。

よく似たイワガラミは林道沿いなどでよく見かけますがツルアジサイは比較的珍しい花です。

 

ヤマトウバナ(シソ科)

これはよく見かける花ですが、シソ科のヤマトウバナです。

沢沿いで小さいながら白い花が目立ちます。

 

沢の水辺にはトンボたちも沢山飛び交っています。

アサヒナカワトンボ

オオシオカラトンボ

数年前の小規模な土石流でできたギャップの開けた場所にオオシオカラトンボがなわばりを作っていました。

 

トチバニンジン(ウコギ科)
左は2週間前、今週は実ができはじめています

これも先々週からよく見かけていたトチバニンジンです。

葉っぱが掌状でトチノキに似ているので…という話は先日しましたね(苦笑)

 

ブチサンショウウオ

沢を詰めて源流部が近くなって沢をのぞいてみるとブチサンショウウオの幼生が出てきています。

いつ干上がってもおかしくない小さな水たまりで微妙な環境の中頑張って生きています。

 

また、違うトンボたちがいました。

ミヤマサナエ

オニヤンマ
いつも縄張りをパトロールしている姿を見かけますが珍しく休憩中

標高が上がって稜線に近づくと林床にニシノヤマタイミンガサの群落があります。

ニシノヤマタイミンガサ(キク科コウモリソウ属)の群落

ヤブレガサ、モミジガサの仲間です。

春の芽吹きのころは小さな傘がたくさん開きかけている状態でかわいらしいんですが、ここまで大きくなると圧巻です。

 

アカショウマ(ユキノシタ科)…多分

山頂下の登山道脇には…多分アカショウマでしょうね。

沢山咲きはじめています。

花は白色ですが茎や葉柄の付け根が赤いのでアカショウマだそうです。

 

下山後の林道沿いにはネムノキの花が盛りを迎えています。

ネムノキ(マメ科)の花

ネムノキは夜になると同じ仲間(マメ科ネムノキ亜科)のオジギソウのように葉を閉じてしまうので眠りの木から名前が付いたようです。

オジギソウは触ったら葉を閉じますが…あんな感じです。

 

最後におまけで沢の風景をもう一つ

最後にもう一つ沢の風景を

猛暑が続くので、そろそろ沢歩きに出かけましょう。

 

  2022年7月2日山行

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梅雨の晴れ間は…五月晴れ

九州北部も6月11日に梅雨入りしたということですが、今年は特に雨が少ないような気がしますね。

と言っているうちに記事を投稿するころには九州北部は梅雨明けしてしまいました。

福岡県東部の行橋市辺りでは既に水不足になっているようで…

先々週末も雨の予報でしたが思いの外天気もよくなり…当然、出かけます。

脊振山麓をうろうろしてきました。

脊振山麓の脇山地区でも田んぼに水が張られ田植えも終わったようです

 脊振山地もぽつぽつと小さな湿地環境があるようですが、昔は山裾の田んぼにもたくさんの湿地環境に生きる生き物たちがいました。

 近場の樫原湿原でよく見られるモウセンゴケやハッチョウトンボ、それからニホンイモリ、カスミサンショウウオ等の両生類も…

 最近は湧水がある休耕田などに湿地環境ができることもあるようですが、湿地環境って結構もろくて、管理をしっかりしないとすぐに藪になってしまうようです。

 

モウセンゴケ(モウセンゴケ科)の花

 

ちょっとおしゃれに撮ってみました。

モウセンゴケの花

前にも書きましたが、モウセンゴケは食虫植物。

にもかかわらず、虫たちに花粉を媒介させるとは…ムシのいい話です。(苦笑)

 

トンボも幼虫は水の中で生活するので水辺にたくさん集まります。

日本一小さなトンボ

水辺にはたくさんのトンボたちが飛び交っています。

ハラビロトンボ(左♀ 右♂)

ハラビロトンボの雄は一見小さなシオカラトンボのように見えますが、胴(おなか)の部分がやや平べったくなっています。

キイトトンボ

ホソミオツネントンボ

ニホンイモリ

ニホンイモリ、可愛いんですが…色がね、ちょっと(笑)

 

少し森に入ってみると一羽の鳥が近づいてきてしきりにさえずっていましたが、おそらく警戒していたようです。

キビタキ♀

はじめ、ウグイスかなと思ったんですがよく見てみるとキビタキの雌のようです。

かなり近づいてきて鳴いていたのでおそらく近くに巣があるのかも知れませんね。

 

 

森の陰の広場にはユキノシタの群落がありました。

ユキノシタの群落

ユキノシタは山里の民家の石垣などにたくさん生えているのを見かけますが、こんな山の中のちょっとした広場に群生しているのは初めて見ました。

 

 

森の木々にも花や実がたくさん…

ヤマボウシ

ヤマボウシはミズキ科の樹木で、十字の白い花のように見えるところは萼片です。

やはりこれもムシたちを呼び寄せるための看板みたいなものなんでしょう。

最近街路樹にもよく植えられているハナミズキは別名アメリカヤマボウシといって、この木の仲間ですね。

 

アワブキ(アワブキ科)

アワブキは枝を火にくべると切り口から泡を吹くそうで、この名前がついたとも言われています。

映像でしか見たことありませんが。

他に、この花の様子が泡を吹いているように見えるからという説もあります。

 

シデの木の仲間たちは果穂を付けています。

この中に種子が入っているんですね。

イヌシデ(カバノキ科)

クマシデ(カバノキ科)

クマシデはビールのホップのような感じです。

次はアカシデのようです。

アカシデ

イヌシデとアカシデの果穂はよく似ていますが、クマシデは随分様子が違いますね。

脊振では山麓から稜線までイヌシデ、クマシデ、アカシデというシデの仲間が見られますが樹皮や果穂の様子と葉の形などから判別します。(多分合っていると思います)

樹皮の場合、イヌシデは樹皮が独特の縦じま模様ですぐにわかりますが、アカシデがなかなかわかりづらいです。

 

 

イワガラミ(アジサイ科)

イワガラミはつる性のアジサイの仲間で花の周辺につく装飾花がうちわのような形で1枚ずつ付いています。

よく似たものにツルアジサイがありますが、この装飾花で区別が付きます。

 

ヤブムラサキ(シソ科ムラサキシブ属)

ヤブムラサキも花をつけています。

秋には美しい紫色の実をつけるムラサキシキブの仲間で、葉の形や実の付き方などで区別できますが、ヤブムラサキの葉には裏も表も細かい毛が生えていて触るとフカフカで気持ちのいい手触りです。

それに比べ、ムラサキシキブは毛が少なくざらついた感じなのでさわるとわかりやすいですね。

ただ、葉が対生で少し似た感じのコバノガマズミの葉っぱもフカフカなのでこれは勘違いしやすいです。

葉の形が違うんですけどね。

今回はどこの山というわけでもなく、山麓をぶらぶらしてみました。

林道わきなんかにも面白い花や虫、鳥たちに出会えますね。

 

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梅雨入り前の山散歩 脊振車谷

唐人の舞から脊振山頂を望む

もうそろそろ梅雨入りも近づいてきていますが、まだすこし猶予の晴天で矢筈峠から椎原峠の稜線沿いを散歩することにしました。

ミツバウツギ(ミツバウツギ科)の葉

ミツバウツギの実

車谷の登山口から山に入り、上の林道付近からミツバウツギがたくさん見られます。

葉っぱが3枚一組で3出複葉と呼ばれる形でカエデの仲間のメグスリノキによく似ていますが、ミツバウツギは実の形が独特です。

 

ジョウカイボン

この日は、いたるところでジョウカイボンの姿を見ます。

ジョウカイボンは甲虫目の昆虫ですが、外翅(上翅)が柔らかいのが特徴です。

カミキリムシに似ていますが、分類ではホタル上科ということです。

ホタルの仲間ですがベニボタルの方が近いんでしょうか?

肉食で小さな昆虫を餌としています。

 

車谷の沢沿いを歩いていると、向かいの斜面の森の中から美しい鳥のさえずりが聞こえてきました。

最後に「ジジッ」とはいるので、もしかしてオオルリか?と声のする方を見ていると高い木の上から降りてきて、一瞬姿を見せてくれました。

やはりオオルリです。

きれいな瑠璃色なんですが、取れた写真はツバメのようで…

少し色を調整しましたが残念ながらあの美しいるり色は出ませんでした。

オオルリ
色の調整で緑が変な色になってしまいましたがご容赦ください

それから、ミソサザイもせわしなくさえずっていました。

ミソサザイ

 

トチバニンジン(ウコギ科)

トチバニンジンももうすぐ花を咲かせそうです。

見ての通り葉っぱがトチノキの葉に似ているから「栃葉人参」ですね。

 

ツマグロヒョウモン(♂)
男の勲章?名誉の負傷?後翅が少しかけてます。

沢沿いでツマグロヒョウモンを見かけました。

タテハチョウの仲間はなわばりをもっていて、なわばりに入ってくる他の蝶や虫たちにスクランブルをかけ戦いを挑むので翅がかけた個体が多いですね。

 

ヤマアジサイ(アジサイ科)の道

車谷上部の登山道脇にはたくさんのヤマアジサイがつぼみをつけていてこの1、2週間には見ごろになりそうです。

さらに登って行くとバイケイソウがもう咲き始めていました。

派手な花ではありませんが独特の雰囲気を持っていて、この花を見ると山深くまでやってきた感じがします。

バイケイソウ(ユリ科シュロソウ属)

 

先週ぽつぽつと咲き始めていたタツナミソウももう花盛りです。

タツナミソウ(シソ科)

稜線に出るとブナ、アカガシ、ミズナラの森が広がっています。

ミズナラ(ブナ科コナラ属)の葉

 

ベニドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)

稜線のベニドウダンもすっかり赤く色づいています。

 

サワフタギ(ハイノキ科)
花にジョウカイボンが来ています

稜線沿いにはたくさんのサワフタギの木が見られます。
これからちょうど花盛りになります。

夏場はなぜか白い花が多くなります。

 

ガマズミ(レンプクソウ科)



アサヒナカワトンボ

それから縦走路にはたくさんのアサヒナカワトンボが飛び交っていました。

カワトンボなんですけどねえ…

明るい縦走路でメタリックグリーンがとてもきれいです。

 

ヤマキマダラヒカゲ

クロヒカゲ

稜線にはヒカゲチョウの仲間の蝶が見られます。

上はヤマキマダラヒカゲ、下はクロヒカゲです。

リョウブやミツバツツジ、イヌツゲ等低木の林床に広がるササの中でひらひらと舞っています。

 

久しぶりに唐人の舞に寄ってみました。

その昔、日本に渡ってきた唐人が遠く祖国を望みながら舞を舞ったといわれる大岩がありますが、先がとがった登るのも大変な岩ですので、おそらくその唐人は雑技団の団員かもしれません。(笑)

唐人の舞の岩の脇に地味で小さなマユミの花が咲いていました。

マユミ(ニシキギ科)

 

コハウチワカエデ(ムクロジ科)の実

この時期はカエデの仲間も面白い形の実をつけています。

プロペラのような羽根のついた「翼果」とよばれる実に種が入っていて、風に乗ってひらひらと遠くまで飛んでいきます。

 

 

ヤマツツジ(ツツジ科)の花

稜線のあちこちにヤマツツジの花も咲いています。

 

シジュウカラ

 

ウグイス

鳥の鳴き声もにぎやかでした。

ヤマガラ、シジュウカラ、ウグイス、キビタキ、オオルリ…

突然近くでウグイスが鳴き始めたのでじっと待っているとちらっと姿を見せてくれました。

ウグイスはなかなか姿を見るのが難しい鳥なのでラッキーです。

あと、シジュウカラのさえずる姿も…

 

ヤマアカガエル(多分)

下山は椎原峠西を回り椎原へ

足元に飛び込んできたアカガエル(多分ヤマアカガエル)

 

アマドコロ(キジカクシ科)

ナルコユリ(キジカクシ科)

メタセコイアの森の上にアマドコロとナルコユリが並んで咲いています。

イボタノキ(モクセイ科)

イボタノキも小さな花をつけています。

 

メタセコイア(ヒノキ科)の葉っぱ

メタセコイアの森で上を見上げると涼しげな若葉がきれいです。

メタセコイアは中国原産の木ですが、生きた化石と言われ数百~数千万年前から現在の姿で地球上に存在している樹木と言われています。

日本ではアケボノ杉ともよばれ公園などに植えられているのをよく見かけます。

脊振の椎原ルートにはなぜかスギの植林の中に突然メタセコイアの森が現れます。

もちろん植林されたものです。

 

ウリノキ(モミジウリノキ)

椎原の登山口付近でウリノキの花が咲き始めていました。

面白い花です。

白い棒状のものがつぼみで、この白い花弁がくるくると巻き上げられていき、おしべやめしべが現れ、開花です。

なかなかコミカルですね。

クマノミズキも咲き始めていますので、これからはヤマボウシも見ごろになってきますね。

楽しみは続きます。

 

2022年6月4日山行

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金山 ブナの縦走路を散策(花編)

脊振の山々もすっかり初夏の雰囲気になってきました。

今回は稜線に咲く初夏の花を求めて佐賀県側から金山へ向かい、東の小爪峠まで散歩してみることにしました。

縦走路から金山を振り返る

山中地蔵の上の林道登山口から金山へ向かいます。

ここの登山道は途中石畳のようになっているんですが、江戸時代には山頂東側に佐賀藩の番所があったようなので昔から道が整備されていたのかも知れませんね。

ちなみに番所とは国境破りの犯罪者などを取り締まるためのものだったようです。

登山道の石畳

脊振山地は主に4種類の花崗岩で成り立つ山で、金山に限らずあちこちに大きな岩壁が見られます。

まるで城壁のような岩

登山口付近から稜線にかけてタツナミソウがぽつぽつと咲いています。

タツナミソウ(シソ科)
花の様子が北斎の絵の立波のように見えるから…?

ミヤマナルコユリ

稜線沿いにはミヤマナルコユリがたくさん見られますが、小さな草花で葉っぱの下に花がついているので気付かない人も多いかも

 

ベニドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)

この時期はこれ、ベニドウダンやシロドウダンが可愛い花を鈴なりにつけています。

ツクバネウツギ(スイカズラ科)

他にも脊振では稜線でツクバネウツギをたくさん見かけます。

おそらく花の形が羽根つきの羽根のようなのでついた名前でしょう。

最近街中でこれによく似たアベリアという花を見かけます。

ツクバネウツギ(タイワンツクバネウツギ)の園芸種ですので仲間の花ですね。

同じ「ウツギ」の名がついていますが、別の仲間でアジサイ科のコガクウツギも林道から山中までいたるところに咲いています。

コガクウツギ

コガクウツギはアジサイ科らしく装飾花をつけた咲き姿です。

ガクアジサイと同じで白い大きめの花びらのようなものはガク片が大きくなったものです。

蝶や蜂など色で花を識別する虫たちを呼び寄せるための生存戦略のひとつでしょう。

装飾花がつく花(花序)はアジサイ科やレンプクソウ科の植物で多いように思います。

 

ギンリョウソウ(ツツジ科)

これは先日も紹介した腐生植物のギンリョウソウです。

しつこく言いますがこれがツツジ科…先ほどのベニドウダンと仲間だそうです。

 

アマドコロ(キジカクシ科)

少し開けた沢沿いのヤブなどでアマドコロが咲いています。

ナルコユリにそっくりですが、花の付き方(アマドコロは少なめ)、茎の角で判別できます。

次はこの1週間前に同じ金山の滝川谷で見かけた花です。

ミズタビラコ(ムラサキ科)

沢沿いに時々見かける小さな花です。

花はヤマルリソウにも似ているように思いますが、こっちの方がもっと小さくて清楚に見えますね。

 

縦走路のブナの森

 

脊振山へ稜線が続いています

金山から小爪峠まで歩き、数十分で林道に下りますが、この時期は林道沿いに咲く花も楽しみです。

森の中に比べて日当たりがいいので、意外に珍しい植物に出会うこともあります。

これは平地でもよく見るかと思います

ノイバラ(バラ科)

ノイバラはよく見かけますが、いつも少ししおれた感じでみずみずしい花に出会ったことがありません。

たまたま時期が悪いのかなあ…

ウツギ(アジサイ科)

これも林道脇にたくさん咲いています。

ウツギです。

で相方といってもいいほどウツギと一緒に咲いているのがスイカズラです。

スイカズラ(スイカズラ科)

スイカズラはこの花の奥に蜜があってこれが甘くておいしいらしいですよ。

 

「ウツギ」と名前のつく植物はいくつかあって、ほとんどが茎や枝の中心(髄)が空洞になっているので「空木」と呼ばれるようになったそうです。

主にアジサイ科とスイカズラ科のものに分かれるようです。

アジサイ科のものは先ほど説明したように装飾花をつけるものが多いような気がします。

スイカズラ科は花が咲いてしばらくすると花の色が変わってくるものが多いようで、先ほどのツクバネウツギやこのスイカズラは同じ株で真白な花と黄色い花とがついていることがあります。

この特徴が最も顕著に出ているのがニシキウツギで、同じ木に白とピンクの花が同時につきます。(まあ、正確には白い花が時間とともにピンクに変色しているのですが)

そういった現象を見ると分類って正しいんだなと思いますね。

 

これも林道から山中までたくさん見かけます。

木が大きいので足下に落ちている白い花で気付くことが多いですね。

エゴノキ

エゴノキです。

この実はエグ味がひどく食べられないとのことで「エグ→エゴノキ」となったそうです。

実はサポニン(エゴサポニン)という成分が多く含まれており、このため食用にはできないけれど、石けんの代わりとして利用されていたそうです。

 

次は葉っぱの裏の毛の付き方などから多分ウラジロマタタビかな?と思うのですが、もしかしたらサルナシかも知れません。

ウラジロマタタビまたはサルナシ(いずれもマタタビ科)

秋を待って実を食べに来てみます。

ちなみに下の写真はマタタビの葉っぱですが、所々ペンキをかけたように白くなっています。

マタタビの葉

これは、花の時期になると蝶などの虫たちを呼び寄せるために葉の内部に気泡をつくって外側からは白く見えるようにしているそうです。

花自体は葉の下に小さく地味に咲いていますので、虫たちに向けた「花、咲いてます」の看板のようなものですね。

これも装飾花と同じように虫たちに受粉媒介をしてもらうための生存戦略です。

ただ、この写真の時点でまだ花はつぼみばっかりで全然咲いてないのですが…

「心をこめて 準備中」(笑)

 

イチヤクソウ(ツツジ科イチヤクソウ属)

林道の土手にはもうイチヤクソウも咲き始めています。
ちょっとアーティスティックに撮ってみました(笑)

 

ユキノシタ(ユキノシタ科)

これは1週間前に滝川谷の登山口付近に咲いていたユキノシタの花です。

秋に咲く仲間のジンジソウによく似た花ですね。

若葉は天ぷらにするとおいしいそうです。

食べたことあるような気がするけど…あんまり記憶にない。

 

次は虫・鳥編です。

 

2022年5月28日山行

 

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金山 ブナの縦走路を散策(鳥・虫編)

ブナの森を散歩

さてさて、写真が多くなってしまったので前編後編に分けました。

この時季になると森の中は鳥の声が賑やかですね。

カッコウや仲間のツツドリ、シジュウカラ、ヤマガラ、ウグイス、ソウシチョウ…

山の中で珍しくコジュケイの声が聞こえてきたので驚いているとなんだかコジュケイより甲高くて様子が違う。

どうやらキビタキのようです。

キビタキはよくコジュケイの鳴き真似をするようです。

あと、美しいさえずりの後の「ジ、ジッ」ってオオルリかな?

声は全く聞こえなかったのですが、下山中に沢から1羽の鳥が飛び立ってすぐ上の枝にとまりました。

じーっとこっちを警戒してます。

暗くてよく見えないのでとりあえず何枚か写真を撮って見たら…

トラツグミ

トラツグミでした。

森の中でうまくカモフラージュされていますね。

このまましばらく固まっていましたが、写真撮って歩き出したらさーっと飛んでいきました。

この鳥は夜中にちょっと不気味な「ひぃーん、ひぃーん」という声で鳴いています。

夏に九重坊がツルでテント泊してるとよく声をききます。

声の不気味さから、昔は架空の動物である「鵺(ぬえ)」の声とされていたようです。

今でもこの鳥の別名としてヌエと呼ぶ人もいます。

でも、なかなか姿を見ることがなかったのでこれはうれしい出会いでした。

目、可愛いし…

次からは虫です。

エサキモンツキツノカメムシ

まあ、カメムシなんですけどね。

背中のハート模様が可愛いでしょ?

カメムシですけどね。

 

 

これは、蛾の仲間です。

キンモンガ

これも山の中でよく見かけます。

蝶と蛾の明確な生物学的区別は無いとも言われますが、このキンモンガなんかは、他に蝶の仲間とされるコミスジと比べても「蝶の仲間でよくね?」と思いますね。

 

 

稜線のツクバネウツギの花にはハナムグリが文字通り…

ハナムグリ
頭、突っ込んでますねえ

 

トビイロカミキリ

林道脇のハハコグサの花の上にトビイロカミキリのようです。

花粉を食べるハナカミキリの仲間でしょうね。

 

 

アサヒナカワトンボ

これは、沢沿いでアサヒナカワトンボ。

羽根が透明な個体と羽黒トンボのように黒い羽根のものもいるようですが、脊振では透明のものが多いように感じます。

 

次からはちょうちょ。

ヒメウラナミジャノメ

アオスジアゲハ

アオスジアゲハは警戒心が強くてすばしこいので撮影は難しいのですが、ウツギの花に夢中で、かなり近づいても逃げませんでした。

この蝶は意外に街中でも見かけます。

10年ほど前には東京の街中でも見かけたことがあります。

次は多分クロアゲハだと思うんですが、これも落ち着き無く飛び回るので…

さらにどこかでファイトしてきたらしく、後翅の一部が欠けてしまってます。

アゲハチョウの仲間って結構武闘派が多くて、昔、井原山頂でキアゲハが縄張りにはいってきたツバメにスクランブルかけてたのを見ました。(笑)

まあ、さすがのキアゲハもツバメには追いつきませんでしたけど…

でも、人間にも耳元に飛んできてバタバタと大きな羽音を立てて威嚇してくることはあります。

 

クロアゲハ

 

 

テングチョウ

上の2枚の写真はテングチョウです。

その名のごとく鼻(頭)の先が天狗のように長く伸びてます。

面白い蝶です。

脊振ではちょくちょく見かけます。

 

下はスジグロシロチョウです。

モンシロチョウだと思っている方も多いかと思いますが、羽根のすじとか…微妙に違うんですね。

どちらも同じシロチョウの仲間なんですが。

クロスジシロチョウ

 

 

アサギマダラ

そして最後の大トリは「女王」アサギマダラです。

ご存知の方も多いかと思いますが、長距離の「わたり」をする蝶として有名です。

数千キロは移動するようですね。

調査のために翅に文字を書き込まれた個体もいるそうですが、まだ出会ったことはありません。

それにしても、そんな長距離を飛べるのか?と思うほど優雅にひらひらと飛ぶ姿は本当に女王の風格です。(オスでも(笑))

 

春から夏にかけて、森ではたくさんの命を感じることができます。

一番楽しい季節。

みんなで山へ、森へ出かけましょう!

 

2022年5月28日山行

 

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