しろ鹿 脊振の山散歩

かけだし森林インストラクターのぶらぶら山散歩

久しぶりの井原山・水無渓谷へ

 

井原山山頂西のピークから脊振山方面

ここのところ、脊振の車谷から金山の間をうろうろすることが多くて、井原山に出かけていなかったので久しぶりに水無谷から登ることにしました。

調べてみたら今年の5月以来です。

 

この日は未明から雷鳴と激しい雨音で目が覚めるほどの天候で、明け方には雨は上がりましたが水無谷はいつになく水量が増え、沢の流れはなかなかの迫力です。

未明の大雨で水無谷の水量もいつになく増えていました

この写真の一番右側の流れは、登山道でいつもは水が流れていないところです。

ガスも出ていましたが、沢の付近は水煙が立っている状態です。

 

さてさて…

駐車場から登山口へ下りるとすぐにスズムシバナがお出迎えです。

スズムシバナ(ゴマノハクサ科)

このスズムシバナは、福岡県のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅰ A類とされていますが、分布地の記載に糸島市が入っていないようです。

脊振山地でも私はここでしか出会ったことがありません。

森林伐採などによる環境変化のために減少したようですので、大切にしていきたいですね。

 

オタカラコウ(キク科メタカラコウ属)

もうオタカラコウも咲き始めていますね。

秋の沢沿いでよく見かける花です。

 

これも秋の花のイメージです。

キツリフネ(ツリフネソウ科)

ツリフネソウの仲間でキツリフネです。

これも面白い花ですね。

茎なり花序の先から放射状にガクや花弁が開く花が多いかと思いますが、ツリフネソウの仲間は独立した花がひもでぶら下がってるだけのような形に見えます。

花の後ろ側は距で、すーっと細くなっています。

なんか、こんな形の帽子があったような…

ツリフネソウはどぎつい赤という感じなのに対し、キツリフネの黄色は上品で好きな色です。

 

登山道の足下にはハグロソウも咲き始めています。

ハグロソウ(キツネノマゴ科)

これも秋の花ですね。

ハグロソウは小さな花でひと株にひとつしか花が咲かないので非常に地味な感じがします。

 

沢沿いにはボタンヅルも咲いていました。

ボタンヅル(キンポウゲ科センニンソウ属)

ボタンヅル、センニンソウはよく似ていますね。

葉が分裂して鋸歯(ぎざぎざ)があるのがボタンヅルです。

花だけ見るとほぼ同じです。

 

日当たりのいい藪にはクズの花が咲き始めています。

クズ(マメ科)

これはどこでも見かけますね。

道路工事現場の脇なんかにも生えています。

根のデンプンから作るくず餅はおいしいですね。

健康にもいい食材のようです。

 

瑞梅寺源流方面への分岐を過ぎると登山道脇に立派な杉の木があります。

登山道脇の大スギ

これ、毎回写真撮ってしまうんですね。

多分、過去の記事にも同じような写真をあげてるかも…

 

シオカラトンボ♀

開けたカヤトの場所でシオカラトンボの雌を見つけました。

平地ではよく見かけますが、山の中では珍しい…かな?

 

諸行無常…

キツネノカミソリの群生地

あれほど咲き誇っていたキツネノカミソリもすっかりこの状態です。

倒れた茎でどれほどの数が咲いていたかわかりますね。

私はここ数年花の時季は人が多いのでここには寄りつかないようにしていますが、本当に素晴らしい光景ですよね。

名残のオオキツネノカミソリ

登山道に近い沢沿いに名残のキツネノカミソリが咲いていました。

もちろん、オオキツネノカミソリです。

 

カナクギノキの実

沢沿いのカナクギノキに実が付いています。

おなじクスノキの仲間のクロモジやシロモジの実によく似ています。

 

キツネノカミソリの群生地のさきのケヤキの森はまだうっそうとした雰囲気です。

うっそうとしたケヤキの森

最後の急登前のスギ林

水無ルートの尾根に登る急登の手前の杉林は少し煙っていい雰囲気です。

 

さて、しばらく最後の急登を頑張って登ると稜線に出ます。

キアゲハ

ツマグロヒョウモン

山頂付近では蝶達が縄張り争いを繰り広げています。

キアゲハが2羽、ツマグロヒョウモンとミドリヒョウモン(多分)がお互いバチバチでバトルしています。

上の写真のとおり、キアゲハは後翅の下の尾の部分が、ツマグロヒョウモンは前肢の端の方が大きく欠けています。

これが名誉の?負傷です。

結構激しいんですよね。

時々ひとにも威嚇してきます。

耳元に飛んできて大きな羽音をさせて威嚇してきます。

 

秋の花も咲いています。

ホソバノヤマハハコ(キク科ヤマハハコ属)

井原山の山頂には秋になるとこの花がたくさん咲いていました。

もちろん、まだ時季ではないのでしょうが、10年程前はもっとたくさん咲いていたように思います。

葉っぱも見かけないので、間違いなく数は減っているようです。

他にセンブリなんかはここ10年で全く見かけなくなりました。

環境の変化もあるのでしょうか、これらは登山客の影響もあるように思います。

以前も親子連れの登山客がラーメンの残り汁をササの根元に捨てていたのを見かけました。

ササの根元辺りにはヤマハハコもセンブリも、春のオキナグサも芽を出す場所です。

食べ物のかすや残り汁を持ち帰るのは最低限のマナー、いやルールです。

そういえば、今の時季であれば井原山の山頂にはカワラナデシコ、コオニユリもたくさん咲いていたんですが…

 

秋の七草が…

オミナエシ(オミナエシ科)

 

こちらはヤマホトトギス。

ヤマホトトギス

花弁が完全に反っていますので「ヤマ」ですね。

他に花の付き方が茎の先にいくつも花を付ける散房花序という形ですね。

花柱や、花糸の斑点の有無も判別の材料とされますが、ちょっとわかりにくいです。

 

オトギリソウ(オトギリソウ科)

これから秋にかけて稜線の日当たりの良い縦走路脇にたくさんの小さな黄色い花が咲いています。

オトギリソウです。

「弟切草」と書きます。

昔、この植物を使って作る秘薬の秘密を他人にしゃべってしまった弟を鷹匠であった兄が斬り殺したという伝説による名前だそうです。

花や葉に黒点が付いているのはその時の弟の返り血だという話もある悲劇の花です。

小さくて可憐な花なんですが…

これは変異種が多くてこれが何オトギリなのかはわかりません。

 

さて、これも随分数が減っているように思います。

サイヨウシャジン(キキョウ科)

サイヨウシャジンです。

もう花も終わりかけてます。

20年ほど前、福岡県の山関係のネット上で「ツリガネニンジン」か「サイヨウシャジン」かで大論争になったそうです。

よく似た花ですが、ツリガネニンジンは花がやや大きいのかな?

県内では平尾台など分布は限られているようです。

これも薬草だそうです。

最近これも数が減ってきてるように感じます。

 

 

サルトリイバラの実

ミツバツツジの群落の中にサルトリイバラの実がなっていました。

もうすぐ真っ赤に色づくことでしょう。

 

 

ツチアケビ(ラン科)の実

今年は、小さな芽生えを確認した後見に来ていませんでしたが、井原山のツチアケビも元気に花を咲かせたようで、立派な実を付けていました。

近くに2株みつけたので、また来年も楽しみです。

花よりもこの実が目立つので、ツチアケビを探すなら秋ですね。

 

ヤブラン(キジカクシ科)

尾根すじにヤブランが花を咲かせています。

以前の分類ではユリ科だったように思いますが、キジカクシ科となっています。

いずれにしても「ラン」の名がついていますが、ラン科ではありません。

花を見ればわかりますね。

ジャノヒゲやリュウノヒゲの仲間です。

 

尾根コースを下って水無谷に戻ってきました。

分岐の大ケヤキ
ミズヒキ(タデ科)
右が赤、左が白

最後に、先日話題にしたキンミズヒキに対して、ミズヒキの花を…

これはまだつぼみの状態ですが、白と赤があります。

それで「水引」になぞらえたのかな?

花は「タデ科」らしい花です。

斑入りの葉っぱも特徴ですね。

 

もう山の上はすっかり秋の準備ができています。

あとは涼しくなってくれないかなあ…

 

2022年8月21日山行

 

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