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高祖神社の檜皮はぎ

檜皮葺きの高祖神社本殿

 ふくおか森林インストラクター会の先輩のお誘いで糸島市高祖神社のヒノキの森で行われる「檜皮(ひわだ)剥ぎ」を見学してきました。

 檜皮(ひわだ)・・・皆さんご存じでしょうか?

 飛鳥時代頃から始まった日本固有の屋根葺き工法で、薄く剥ぎ取ったヒノキの皮を屋根に幾重にも重ねて葺きます。

 格式高い工法で、現在でも有名な寺社では檜皮葺きの建物がたくさんみられます。

 福岡近郊でも太宰府天満宮、筥崎宮などでみられます。

 

 当日は朝から雨で、採取した檜皮を濡らせないので雨天の場合見学会は中止の予定でしたが、雨の中集まった数名の見学者、取材の方のためにデモンストレーションとして、少しだけ檜皮剥ぎをやっていただけることになりました。

 

今日デモを行うヒノキは、約10年前に皮を剥いだヒノキです。

檜皮に使うのはヒノキは、皮を剥いだ後の回復力や材の形状を考慮し、樹齢80年を超えたものを選ぶそうです。

本日皮を採取するヒノキ

1度皮を剥ぐと約10年でまた檜皮として使える樹皮が再生するそうです。

初めて剥いだ皮の表層は「荒皮」と呼ばれる質の悪い層で、屋根材としては使えないので、これをさらに剥いで「黒皮」と呼ばれる下の層の部分を採取するのですが、一度皮を剥いだ木は、10年後に再生した表層がすでに黒皮の状態で、材質も良くなり、荒皮を除去する必要はないので効率が良くなるようです。

 

下の写真は、左側が高祖山で10年ほど前に皮を剥いで再生したひのき、右は四王寺山の皮を剥いだことのないヒノキです。

高祖神社のヒノキ(左)と四王寺山のヒノキ(右)

樹皮の様子が少し違うのがわかりますね。

左の方が樹皮の縦模様がきれいに出ているかと思います。

 

皮を剥ぐのにはヒノキの幹を登って行くときに使う振り縄(ぶりなわ)、木製のヘラ等の道具を使います。

ヘラはカナメモチでつくるそうで、先の厚みや長さなど職人ごとにカスタマイズされているそうです。

木製のヘラを使うのは、表皮のすぐ下にある「形成層」と呼ばれる樹木の成長に大切な部分と師部と呼ばれる栄養を蓄える部分に傷をつけないようにするためです。

皮を剥ぐためのヘラと振り縄(ぶりなわ)

振り縄には木の棒が2本取り付けられていて、縄を幹に巻き付けて一方を足場に一方で腰を固定しながら木の上で作業を進めて、どんどん上に登っていきます。

作業中はしっかり固定して、上下に移動するときには簡単にほどけるという、技術が必要ではあるけど画期的な道具です。

先人の知恵はすごい。

 

作業が始まりました

まずは下の方からヘラと手を使って皮を剥いでいきます

ぶり縄を使って上の方に向かって剥いでいきます

剝ぎ取った皮を下ろします

皮を剥いだ後の幹(矢印は残された形成層や師部)

作業を見ていると簡単そうに皮を剥いでいきますが、実は樹木にとって生命維持や成長のために重要な形成層や師部を傷つけないように慎重に作業を進めていきます。

この慎重な作業により、また10年後の檜皮の採取ができるようになるんですね。

サステナブルです。

自然と共生しながら生きてきた日本人の知恵・・文化です。

 

採取したヒノキの皮

採取した皮は、ある程度保管されたあと、厚さをそろえ、長さを2尺半(約75センチ)にそろえて30kgの束にまとめて製品(檜皮材)となります。

ちなみに、屋根1坪(約3.3㎡)あたり150kgの檜皮を使うそうで、下の右の写真の束で5束で1坪しか葺けないということになりますね。

剥いだ皮をもう少し薄くして檜皮材にします

 この森で採取した檜皮を使って(全部ではないそうですが)2014年から高祖神社の本殿が葺き替えられ2016年に完成したそうです。

高祖神社本殿の檜皮葺き屋根

本殿屋根の葺き替えの様子が解説板に紹介されています

屋根に檜皮を張り付けるのに竹釘を使うそうです。

 

3年ほど前にも檜皮剥ぎの作業が行われたそうで、参道のヒノキが所々赤く見えます。

3年前に檜皮を採取したヒノキが点在しています

檜皮を剥ぎ取ったヒノキは、しばらくすると樹皮が美しい赤色になります。

赤みを帯びるというよりも、本当に美しい赤色です。

3年前に皮を剥いだ参道のヒノキ

3年前に皮を剥いだヒノキの樹皮

 檜皮を剥ぐ職人を「原皮師(もとかわし)」と呼ぶそうですが、現在30名程度しかいないとのことで、一見そこそこ人数がいるようにも思えますが、ひとつの建物で大量の檜皮を必要とすることを考えると、日本中にたくさんある檜皮葺きの寺社などの文化財の葺き替えを賄うのには全く足りていない状態のようです。

 もちろん檜皮屋根の葺き師、竹釘師等の職人の不足もあり、日本独自の伝統文化である「檜皮葺き」が減少していく恐れがあります。

 もう還暦を過ぎた私には直接的になにかできるとは思えませんが、少しでも多くの方に伝えることができればと思います。

 

 ところで、檜皮葺きや原皮師等の情報については、それぞれ検索してみるともっと詳しい情報が得られます。

 ぜひ検索してみてください。

 あと、今日聞きかじった話で、間違いがあるかもしれませんので…(苦笑)

 それから、糸島市の高祖神社、本殿は2023年に国の重要文化財に指定されたそうで、境内は、深い森の中静かで厳かな雰囲気です。

 ぜひ一度出かけてみてください。

 

2026年2月7日

 

ふくおか森林インストラクター会 | ふくおか森林インストラクター会は自然や森林の大切さを伝える活動をしています。