しろ鹿 脊振の山散歩

かけだし森林インストラクターのぶらぶら山散歩

春から初夏へ 井原山

井原山頂から金山を望む
ミツバツツジの花も終わって落ち着いてます


人出の多い連休中を避け連休1週間後の井原山に出かけました。

新緑の水無谷を歩きます。

木々の新緑ももちろんですが、沢の苔の緑も鮮やかです。

水無谷の沢

水無谷にはコクサギが多く、春先から柑橘系のさわやかな香りが香っています。

水無谷にはコクサギがたくさんあります

コクサギは葉っぱのつき方が変わっています。

上の写真を見て下さい。

基本的には葉っぱが互い違いにつく「互生」ですが、よく見てください。

1枚ずつではなく2枚ごとに対生になってます。

これを「コクサギ型葉序」と呼びます。

他に脊振でみられる樹木の中ではヤブニッケイも時々コクサギ型になることがあります。

 

沢沿いにはもう花の終わったコンロンソウの葉が生い茂っています。

コンロンソウ(アブラナ科)の葉

分岐の大ケヤキ

ミツバツツジの花も終わって沢の草花も端境期に入っていますが、それでも春の花が咲いています。

カキドオシ(シソ科)

ラショウモンカズラ(シソ科)

カキドオシとラショウモンカズラは同じシソ科の花でよく似ています。

カキドオシの方が花が小ぶりです。

 

サイハイラン(ラン科)

サイハイランも咲いています。

…これでも、咲いているんです。(笑)」

大昔、戦(いくさ)で大将が振るう「采配」に似ているとのことでこの名前になったそうです。

地味ですね。でもランの仲間です。

葉っぱは1枚だけ、1年中ペロッと出ているのが見られます。

 

クルマムグラ(アカネ科)

クルマムグラはアカネの仲間らしく葉は輪生していますが、この輪生した葉が車のように見えるので車葎…葎(むぐら)とは草やぶなどの意味があります。

その名の通り葉が特徴的で面白いですね。

 

ヤブデマリ(レンプクソウ科)

ヤブデマリの花が咲いていました。

ガマズミやムシカリの仲間で、同じように小さな花がたくさん集まってつきますが、アジサイのように花の周りに装飾花(萼片)があります。

そのヤブデマリの花にも小さなカミキリムシが来ています。

ヨコモンヒメハナカミキリ

ハナカミキリムシの仲間でヨコモンヒメハナカミキリです。

一生懸命花粉を食べています。

他にも虫たちが出てきています。

やっぱり春は楽しいですね。

日当たりの良い登山道にニワハンミョウがたくさん出ています。

ニワハンミョウ

コウチュウ目オサムシ科ハンミョウ亜科ということのようです。

…オサムシの仲間にされているんですね。

肉食で昆虫やミミズを食べる虫です。

昔は街中の路地に翅の美しいハンミョウをよく見かけましたね。

路地を歩いているとふわーっと飛んで少し先にとまって、ひとが近づくのを待って、また少し先に飛んでいくので「みちおしえ」と呼ぶこともあるようです。

そのハンミョウの仲間ですが、このニワハンミョウは「ニワ(庭)」という名前の割に町中ではなく山にいます。

同じようにひとが近づくと少し先に飛んで地面にとまります。

 

トンボも色々出てきていますね。

ダビドサナエ

ヤブヤンマ

イタドリの葉にダビドサナエがとまっていました。

沢ではヤブヤンマのメスかな?

尻尾をあちこちの草の茎にくっつけて卵を産み付けているようです。

 

こっちはカメムシですね。

ツマキヘリカメムシ

カメムシにはあまり関わりたくないので(笑)写真だけ撮っておきます。

ただ、カメムシでもキンカメムシの仲間なんかは見た目が派手で美しいですね。

また見かけたら画像を載せますね。

 

この時期山道を歩いていると上から細い糸で小さな毛虫がぶら下がっていることがあります。

大概エダシャクガの幼虫のような気がしますがこれもエダシャクの仲間です。

エダシャクガの幼虫

ヒメノコメエダシャク…かな?

シャクガとは幼虫が尺取り虫の蛾ですね。

尺取り虫は枝に擬態する茶色い地味なものも多いのですが、このように少し派手目の幼虫もいます。

 

キツネノカミソリ(オオキツネノカミソリ)の群落地は葉っぱが枯れてしまいこんな感じになってます。

葉が枯れたキツネノカミソリの群落

7月終わり頃には葉が消え去った林床からオレンジの花がたくさん出てくることでしょう。

 

ケヤキの森

ケヤキの森もうっそうとしてきましたが、やっぱり落葉広葉樹の森は爽やかですね。

このあと急登を登って尾根に出ますがまだ少しコバノミツバツツジの花が残っていました。

なごりのミツバツツジ(コバノミツバツツジ)の花

稜線や尾根筋にも花が咲いています。

フモトスミレ

麓より稜線でよく見かけるフモトスミレ。

 

ヒメハギ

稜線で日当たりの良い乾いた土の上にはヒメハギが咲いています。

ヒメハギ科またはマメ科。

 

井原山から雷山方面はガスの中

山頂に着いたときはガスが出ていましたが、しばらくするとガスも晴れて天気は回復してきました。(冒頭の写真)

 

ツチアケビの芽生え

ツチアケビも芽を出しています。

登山道脇なので毎年心配していますがちゃんと毎年地味な花と秋には不思議な実を見せてくれます。

 

ミヤマナルコユリ(キジカクシ科アマドコロ属)

ヒメナベワリの花(ビャクブ科)

他にも可愛いミヤマナルコユリ

それから、ヒメナベワリも花をつけています。

この日は風が強くて写真を撮るのに30分頑張りましたが、なんとか見れる写真は2、3枚…

 

最後に「ヒメ」つながりで、この時期沢沿いにたくさん咲いているヒメレンゲの可愛い写真を。

ヒメレンゲ(ベンケイソウ科マンネングサ属)

5月14日山行 しろ鹿

 

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虫たち

コバノガマズミの花

先日のゴールデンウィーク中は山の人出も多そうだったので、脊振山麓をうろうろと、山登りではなく散歩してきました。

ある場所で森の周辺の日陰にコバノガマズミが咲いていたので写真を撮っていると花の上にいろんな虫たちが来ているのに気付きました。

カバイロコメツキ

まずはカバイロコメツキ。

その名の通りコメツキムシの仲間です。

花粉や葉を食べるているようですが、昔から桑の苗等農作物を食害する害虫とされているようです。

捕まえてひっくり返してペコンと飛び上がるのか試したかったのですが小さいし素速いし…

すぐ逃げられました。

 

 

キバネホソコメツキ

次に同じコメツキの仲間でキバネホソコメツキ。

これも花粉を食べに来ているようですが、食害の情報はあんまり無いようですね。

ただこの辺りの仲間は生態がわからないものが多いので…どうなんでしょうね。

 

 

ヒメアシナガコガネ

次はコガネムシの仲間でヒメアシナガコガネ。

広葉樹の葉っぱをよく食べるようですが、クリやリンゴなどの果樹の花を食い荒らしたり、幼虫は芝の地下で根を食べるため芝生の害虫としても知られているそうです。

かわいらしいんですがねえ…

たまたま人間の生産活動とかぶってしまうので「害虫」と言われますが、向こうも生きるためですのでやむを得ないですね。

そういえば以前に見学した平戸の「たびら昆虫自然公園」では、構内に畑があって農作物も植えてあるんですが、ここでは昆虫が主役ですから作物も収穫せず伸び放題でこれにたくさんの昆虫が集まっていました。

昆虫は特に人間の活動と重なることが多いので、丁度良いところで共存できればいいですね。

次も「害虫」…?

トゲヒゲトラカミキリ

カミキリムシの内、ハナカミキリ虫の仲間でトゲヒゲトラカミキリです。

「トゲ」と「ヒゲ」と「トラ」の順番間違えそうです。

小さなカミキリムシですがきれいな模様ですね。

これも花粉を食べにやってきているようですが、幼虫がヒノキ等のいわゆる「とびくされ」の原因になっているとも言われているそうです。

幼虫はトチノキやらヒノキ、アスナロなどの枯れ枝から入り込み幹の中に穿孔してその食痕から材が腐植したりするそうです。

…まあ、当然過剰に増えなければある程度は自然の営みでもありますし、もし異常発生することがあれば、環境破壊などが原因である可能性が高いので回り回って人間のせいということにもなるのでしょうね。

 

フタオビチビハナカミキリ

次もハナカミキリ虫の仲間でフタオビチビハナカミキリ。

虫や植物の名前で「小さい」という意味では「コ(小)」がついたり「ヒメ」がついたりしますが「チビ」ってそんな直球で…(笑)

ただフタオビヒメ(またはノミ)ハナカミキリという呼び方もあるようです。

これはあまり「害虫」としての情報は見かけませんね。

カミキリムシの幼虫はほぼ木材を食べるのですが枯れ木を食べるものもあり、これはあまり人間の生産活動とはかぶらないので「害虫」にはならないのかも知れません。

生態自体がわかってないのかも知れませんが。

 

チャイロヒメハナカミキリ

次もハナカミキリ虫の仲間です。

この幼虫は枯れ木を食べるようです。

いずれにしてもこれらの昆虫は樹木の中のいわゆる食物繊維であるセルロースなどを食べて細かくして、あとあとキノコなどの菌類がこれらを分解しやすくして森の土壌を豊にする役割を担っているので人間にとって「害虫」でも森の生態系の中では大切な存在であります。

もちろん、生態系の中で昆虫を食べる小動物たちのエサとしての役割もありますし。

こういったひとつひとつの生き物たちが絶妙なバランスで共存しながら成り立っているのが森であり地球全体の自然環境でもあるのです。

 

ところで、こことは別の場所で面白いチョウチョを見つけました。

下の写真の中にいる蝶、わかりますか?

どこかにチョウチョが…

そう、ちょうど画像のまん中あたり

クロコノマチョウ

森の中にいるチョウチョでタテハチョウ科のジャノメチョウの仲間でクロコノマチョウです。

廻りの落ち葉に擬態していますが、よほど自信があるのか30㎝くらいまで近づいてもピクリとも動きません。

「いや、おれ枯れ葉だから…いや蝶じゃないよ…」てな感じでしょうか(笑)

翅の表にはジャノメ模様があるそうですが、何しろ警戒中なので見せてくれません。

実はこの蝶を見るのは2回目なのですが、表側は見せてもらったことがありません。

しかし、なかなか見事な擬態ですね。

幼虫の食草はジュズダマだそうです。

 

先ほど昆虫たちを食べる小動物のエサ…という話をしましたが、こんな植物もいます。

モウセンゴケ

食虫植物のモウセンゴケです。

葉の先にある毛から甘いにおいのする粘液を出してこれによってきた小さな虫を溶かして吸収します。

5月には小さな白いかわいらしい花を咲かせるのですが、この日はまだつぼみもありませんでした。

花粉の媒介はやはり虫がするそうですが、モウセンゴケって花粉を運んでもらったりエサとして食べたり、虫を利用しすぎですね(笑)

ただ、そんなモウセンゴケにも天敵がいるそうで、消化粘液に耐性をもつ昆虫の幼虫がモウセンゴケを食草にしているそうです。

食物連鎖って面白い。

 

今回はほとんどひと株のコバノガマズミの花のまわりだけをネタにしてしまいましたが、決して手を抜いたわけではありません。

小さな花にたくさんのこれまた小さな昆虫たちが来ていたのでこれは是非皆さんに見てもらいたいと…

では、また。

 

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三瀬峠から金山へ

城山東側の岩場(西鬼ヶ鼻)から金山を望む

 連休二日目の晴天で、井原山や車谷方面は登山者が多そうなので三瀬峠から金山に向かうことにしました。

 三瀬峠は最近井原山への登山口の少し上の方にかなり大規模な太陽光発電設備が設置され、以前駐車場として使用されていたスペースが閉鎖されてしまいました。

 やむなく雷山林道の路肩に駐車するしかなさそうです。

 峠から金山方面の登山道に入るとすぐに照葉樹林の急登が続きます。

カゴノキ(クスノキ科)の独特の幹

スダジイの若葉

照葉樹(常緑広葉樹)は今新芽、若葉が続々と出てくる時期で、この時期に古い葉っぱが落ちてしまいます。

照葉樹の葉っぱは表層面のいわゆるクチクラ層にロウの成分が多く硬いので、これを踏みながら歩くと葉っぱ同士がつるつると滑って特に急登では登りにくくなります。

熊手を持って歩きたい。

アカガシの落ち葉で登山道はツルツル滑ります

立ち枯れの木にラーメンのお供(キクラゲ)を発見

しばらく歩いているとたまたまつながったメールで友人がお日様に虹みたいなカサがかかってると教えてくれましたので空を見上げると…

木々の隙間から青空に虹が

三瀬山を過ぎ斜面を下ると少し開けたシロモジの群落地に出ます。

ここで空を見上げると見事な日暈が見えました。

日暈(ひがさ)またはハロというようです

晴天でしたが上空に寒気が入るとの予報でしたので薄い雲が広がっているようですね。

 

ひとしきり日暈を眺めてちかちかする目をこすりながら城山への斜面を登りアゴ坂を峠を経由し金山を目指します。

金山の南側に広がる庭園のような明るい林のあたりで春の草花を期待しましたが、ミヤマナルコユリもホウチャクソウもまだまだつぼみでした。

急登でミツバツツジのピンクに出会うと少しホッとします

 

アカガシの森の林床にはツルシキミの花が咲いています。

同時に赤い実がなっている株もあります。

ツルシキミ(ミカン科)の花

ツルシキミの実

稜線のやや乾いた土の上にはカンアオイがたくさんあります。

カンアオイも色々な変異があり、判別は難しいのですが、おそらくウンゼンカンアオイかと思います。

カンアオイは葉の鵜hの入り方が様々で愛好家も多いようですね。

葉の感じはシクラメンに似ていますが、全く別の仲間です。

カンアオイはウマノスズクサ科、シクラメンはサクラソウ科だそうです。

カンアオイ(多分ウンゼンカンアオイ)

じつは春から初夏はカンアオイの花の時期なんです。

どんな花かというと・・・

これがカンアオイの花

ちょっとわかりにくいですが、茶色とか濃いエンジ色で非常に地味です。

この花の受粉の媒介をだれがやっているのかはっきりしていないようです。

花は葉の下に完全に隠れているので風媒介や蜂や蝶は考えにくい。

カタツムリやナメクジ、ヤスデ、またキノコバエの例もあるようですが…

興味のある方はじっくり研究してみると面白いかもしれませんね。

 

これもちょっと変わった植物・・・

ギンリョウソウ(ツツジ科ギンリョウソウ属)

ギンリョウソウは腐生植物で、主に照葉樹林の林床に積もった腐葉土から出てきますが、腐葉土からではなく周辺の樹木の根に菌根をつくっているキノコに寄生しキノコ経由で樹木が光合成によってつくった養分を分けてもらっているようです。

自分で光合成をしないので葉緑体を持たず真っ白です。

この生態からキノコの仲間と間違われて「ユウレイタケ」という別名もあります。

ところで、ギンリョウソウは「イチヤクソウ科」と覚えている方も多いのではないでしょうか?

私もそう思っていましたが、調べると最近主に使われている分類法ではツツジ科ギンリョウソウ属となっているようです。

 

ホウチャクソウ(イヌサフラン科チゴユリ属)はまだつぼみ

ニョイスミレ
これは最もよく見かけるスミレです

 

ヒロハテンナンショウ(サトイモ科テンナンショウ族)

ヒロハテンナンショウは福岡県のレッドデータブックで絶滅危惧ⅠAに指定されていて、福岡県付近が自生の南限にあたるそうです。

見ての通りマムシグサと同じ仲間でサトイモや夏が来れば思い出すミズバショウも仲間です。

サトイモと同じように地下に芋(天南星)ができますが、毒を持っていて食べると口の中に無数の針が刺さったような痛みが出るそうです。

この仲間で食べられるのはサトイモだけですね。

 

アケビの花(アケビ科)

ベニドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)のつぼみ

ナワシログミの実

アカガシの森の中でナワシログミの実がなっているのを見つけました。

色はまだ薄いようですが少しつまむと柔らかかったので口に入れてみましたが

まだ酸っぱい!

 

コバノガマズミ(レンプクソウ科)にハナカミキリ

コバノガマズミの花もぼちぼち咲き始めています。

写真を撮って、後でよく見たら花の上でカミキリムシが交尾をしているようです。

ハナカミキリの仲間でしょうか?

 

サルトリイバラ(サルトリイバラ属)

サルトリイバラにも花がついていました。

秋の赤い実はリースを作るときに使うことも多いようですが、九州ではカシワの葉の代わりに餅を包んでこれを「かしわもち」と呼ぶ地域も多いようです。

 

さあ、連休も始まりました。

そろそろ花の季節真っ盛りとなりますね。

当然蝶やトンボなどの昆虫もでてきます。

毎週山へ出かけるのが楽しみです。

               2022年4月30日山行

 

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春の車谷へ

まずは登山道情報です

今日は九千部山桜谷ルートでサバノオの花を探しに行こうとしましたが、現在林道工事のため桜谷は通行止めとのことです。

来年3月までとのことでした。

唐人の舞下付近から福岡市内を望む

しょうがないので、登山口が近い坂本峠から蛤岳を目指そうかと思いましたが、坂本峠も災害で通行止めとのことで、板谷峠から椎原へ下りいつもの車谷を登ることにしました。

タブノキの新芽

本当にすっかり春ですね

様々な木々の新芽が芽吹いています

カエデの林の新緑

アブラチャンの葉に水玉

新緑もきれいです

ツクバネソウ(シュロソウ科)

林道から急登を登りきるとスギ林の中にツクバネソウが咲いています。

これは不思議な花で、このとおり花弁がありません。

花弁がない花はたくさんありますが、例えばガクが花弁のようになっていたり、装飾花がついていたりします。

ところが、この花はそれもないのでとても地味で面白いですね。

 

沢を渡ってすぐ右手に分かれる沢には出会い付近にヤブツバキの木がありなかなかいい雰囲気を醸し出しています。

苔むす沢

新緑の沢

ニリンソウ(キンポウゲ科)

沢沿いにニリンソウも沢山咲いています。

 

ヤマルリソウ(ムラサキ科)

ニリンソウの葉の中にヤマルリソウが立ち上がって咲いていました。

どちらかというと日当たりのいい土の斜面に匍匐して咲いているイメージですが、沢沿いの落葉樹林の林床にこんな風に咲いているのは珍しいような気がします。

 

ハルトラノオ(タデ科)

今日は桜谷のサバノオが目当てでしたが、車谷のこの時期ならこれに会いたかった。

ハルトラノオです。

「トラノオ」の名がつく草花には主にタデ科とサクラソウ科のものがあります。

このハルトラノオはイブキトラノオ属で葉や花の感じはやはりタデに似ています。

おしべの先の葯の赤色がかわいいですね。

 

他にも沢沿いに色々な花が咲いています。

シロモジの花(クスノキ科)

ジロボウエンゴサク(ケシ科)

 

車谷の上部にバイケイソウがたくさん芽生えています。

昨年ほとんど見かけなかったのですが、今年はたくさん出てきています。

昨年が何だったんだろう?

バイケイソウ(ユリ科)

稜線に出て椎原峠方面へ向かいます。

稜線も春です。

ミツバツツジをはじめたくさんの花が咲いています。

アカガシの新芽

ニワトコの花(レンプクソウ科ニワトコ属)

ミツバツツジがいたるところに咲いています

オオカメノキ(ムシカリ)(レンプクソウ科ガマズミ属)

ニシキゴロモ(シソ科)

フモトスミレ(スミレ科)

今日はしっかり花の写真を撮るつもりで出かけましたがバッテリーのローテーションを間違えて途中でバッテリー切れ。

もう少しいろんな花が咲いていたんですが…

まあ、これから次々にいろんな花が咲き始めるのでまたたくさん紹介します。

今回はこれまで。

 

2022年4月24日山行

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傾山へ

またまた脊振ではない山へ…

上畑の集落付近から望む傾山

近いうちの祖母・傾縦走をやりたいなと考えていましたが、よく考えると傾山には登ってなかったことに気づきました。

このところ大分出張が続いているのでせっかくならということで下見がてら傾山へ出かけることにしました。

傾山は祖母・傾山塊にあり大分県・宮崎県の県境に位置します。

この山域は本当に山深く険しいので十分な下調べと準備が必要です。

ルートは比較的安全な上畑から九折越え経由で傾山へ向かうコースです。

それでも登りのみで4.5時間はかかります。

登山口には十分な駐車場もあり、きれいなトイレもあります。

登山口から傾山頂

登山口付近から傾の威容が見えます。

登山口から作業道のような道を進み山に分け入るとほとんど斜面をトラバースする道が続きます。

期待していた沢ははるか下の方に流れています。

深い森の中を進みます

少し脊振の金山の登山道を思わせるような雰囲気がありますが、森の深さ、山の大きさが違います。

標高が上がっていくとやがて新緑の中にミツバツツジのピンクが見え始めます。

ミツバツツジ

林道を渡って尾根を登ってゆくと木々の間に傾山の威容が見え始め、周辺はツガの森になります。

名残ヤマザクラの向こうに傾山頂

 

ツガの森

尾根道のツガの大木

ツガの大木

ブナの芽生え

急な斜面を折り返しながら登ってゆくと足元に何か小さな花のようなものが…

調べてみるとブナの芽生えのようです。

これはなかなか珍しい。

なぜ珍しいかは後ほど

 

稜線が近づくとヒメシャラの木が目立ちはじめます

しばらく上ると開けた稜線に出ます。

九折越えです。

登山口から3時間15分ほどかかりました。

九折越えから傾山北側の稜線を望む

 

稜線に出ると気持ちのいい落葉樹林の中を進みます。

この辺りは鹿が多すぎて、森の下草や樹木の樹皮を食べてしまうので鹿よけのネットが張られています。

稜線はカエデ類やブナなどの森ですが、普通ブナの森の林床にはミヤコザサなどのササ類が茂るのですが、ここは林床にササも草本類もほとんど生えていません。

だから、逆に先ほどのブナの芽吹きを見ることができるのかもしれません。

稜線の森

稜線には鹿よけネットが張られています

稜線を進んでゆくと傾山の威容がさらに迫ってきます。

イカツいです。

心折れそうになります。

なんだか威嚇されてるような気になります(笑)

稜線から傾山頂をのぞむ
左側が本傾、右側が後傾

ヤマガラ

シロモジの花

山頂が近づいて傾斜がきつくなってくると急にアセビの群落が現れます。

アセビの白い花がもう鈴なりに咲いています。

山頂付近のアセビ

アセビの花

正面から見るとどうやって登るのかと途方に暮れそうですが、後傾までは急ながら安全な登山道が続き、本峰の山頂へも裏側から安全に登れます。

傾山頂

山頂直下の断崖

祖母山方面の稜線を望む

大崩山塊を望む

山頂から九重連山を望む

山頂にはマンサクの花が咲いていました。

この辺りはまだ平地でいうと3月頃の気候なんですね。

マンサクの花

山裾の谷や尾根にツガやモミの森が広がっているのがわかります

今回は縦走の下見でもあるので周回せずに同じ道で下山します。

祖母、傾、大崩という山域はやはり九州でも最も山深く険しい山です。

色々な意味で脊振では味わえない魅力があります。

新緑の森

ここ数年脊振ばかり歩いていたので、今年はちょくちょく遠征をしたいと思っています。

例えばツガの森やシカの食害のあと…普段脊振では見ることができない色々な自然の出来事を見ることができます。

脊振の自然とともにお伝えしていきたいと思います。

 

2022年4月16日山行

 

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春です

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晴天の井原山頂から福岡市を望む

まだ気温が安定しませんがすっかり春らしくなってきたので春の花を求めてアンノ滝から水無谷経由で井原山を目指しました。

 

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タブノキの花

早速登山口へ向かう道路脇の沢沿いにタブノキの花が咲き誇っています。

タブノキはシイやカシの仲間とともに照葉樹林を代表する樹木ですね。

あまり花を気にしたことはありませんでしたが、よく見るとこんな花なんですね。

林道や登山口付近ではムラサキケマンやフウロケマンが見られます。

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ムラサキケマン

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フウロケマン

どちらもケシ科のキケマン属ということですが茎などには毒があるそうです。

フウロケマンによく似た黄色い花のキケマンは海岸沿いに多くてキケマンに比べるとフウロケマンは貧弱に感じます。

 

登山道に入ってしばらくすると日陰の斜面にサツマイナモリが咲いていました。

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サツマイナモリ

これも比較的標高の低いところではよく見かけますね。

 

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ダルメキ谷の滝

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カンスゲの花穂も出てきてます

林道を渡って杉林を抜けしばらく歩くとアンノ滝につきます。

アンノ滝の下に比較的大きなヤマザクラの木があります。

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アンノ滝のヤマザクラ

今日の目当てのひとつでしたが…花が終わってるのかな?

すっかり寂しくなってます…が、よく見ると花びらが全然落ちてないので花はまだこれからのようです。

ヤマザクラはソメイヨシノと違って花と葉が一緒に出てきます。

花は少し控えめな感じがします。

 

沢沿いにはニリンソウやヒトリシズカも咲き始めています。

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ニリンソウ
イチリンソウとニリンソウは葉っぱが明らかに違います。
花の数ではありません

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ヒトリシズカ
あまりひとりでで静かには咲いていません

アンノ滝を過ぎて少し上から分岐を左に瑞梅寺川の源流を経由して一旦水無谷におります。

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コクサギ(ミカン科)の芽

水無谷にはコクサギがたくさんあって、春先からさわやかな柑橘系の香りがします。

もう芽が出ていて花ももうすぐ咲きそうですね。

 

よく似た黄色い花も咲いてます。

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アブラチャン(クスノキ科)…多分

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シロモジ

 

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クロモジ(ケクロモジ)

クロモジは若い枝が黒や緑色なのでわかりやすいのですが、アブラチャンとシロモジ、ダンコウバイも葉が出る前はわかりにくいですね。
このあたりの木は前年の葉が残っているものがあるので、上の二つはそれで判別しました。

特にダンコウバイとシロモジは3裂した葉で独特の形をしているので葉っぱさえあればすぐにわかります。

 

あと、水無谷といえばキツネノカミソリですが、この時期は落葉樹の林床に葉が茂ってこれも独特な風景になります。

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ケヤキの森にキツネノカミソリの葉

それからあちこちにスミレの花も咲いています。

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シハイスミレ

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エイザンスミレ

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タチツボスミレ

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タチツボスミレ
こちらは日陰なので少し色が柔らかい

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ナガバスミレサイシン…多分

スミレは地域で変種が多いので本当に難しい。いがりまさしさんのスミレの図鑑を10年以上前に買ってしばらくにらめっこしてましたが、やっぱりわからない。

上のスミレたちは葉に特徴があるのでわかりやすいのですが…

スミレは花の後ろの「距(きょ)」と呼ばれる部分が大工さんが使う墨壺(墨入れ)に似ているので墨入れ→すみれとよばれるようになったそうです。

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スミレの距

花や葉の特徴の他この距の形なども判別の材料になります。なかなかわかりにくいけど…

 

稜線沿いの落葉樹の森を歩いているとコゲラがこんこんと木の幹をつついていました。

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コゲラ

コゲラはスズメくらいの大きさで、日本で一番小さなキツツキだそうです。

留鳥ですので一年中みられますが、いつも木の枝を登っていきながらエサを探しているので樹木の葉が落ちている冬場が一番見やすいでしょうね。

 

これからの季節は次々にいろいろな花の時期が始まるので楽しみですね。

みんなで山や森に出かけましょう!

 

2022年4月2日山行

 

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小爪谷からマンサクの花を探しに鬼が鼻へ

そろそろ春めいてきました。

福岡市では先日ソメイヨシノの開花宣言が出ました。

もうそろそろ鬼が鼻のマンサクも見ごろかもしれません。

ということで、久しぶりに小爪谷から猟師ヶ岩、鬼ヶ鼻岩へとマンサクを探しに出かけてきました。

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小爪谷の沢

天気予報では曇予報でしたが、山沿いは結構しっかり雨が降り始めました。

それでも、春ですね。

林道から春の花がいろいろとみられます。

キブシの花(キブシ科キブシ属)
林道でたくさん見られます。

タラの芽
まだ早いかな?でも来週には誰かが…

コショウノキ(ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属)

こちらはスギ林の中に咲いていたコショウノキ
ジンチョウゲの仲間(原種?)なのでいい香りがします

林道から登山道に入るとすぐにツクシショウジョウバカマが咲いていました。

昔ユリ科と覚えていたのですが、最近主に使われている分類法ではメランチウム科に分類されるそうです。

アジサイもユキノシタ科からアジサイ科に変わりましたしぼーっとしてると情報がどんどん古くなってしまいます。

ツクシショウジョウバカマ(メランチウム科)

本州などでみられるショウジョウバカマの花は淡紅色から紫色でその花の色から猩々の赤い顔を連想してついた名前のようですが、九州地方では白に近い色のツクシショウジョウバカマが多く見られます。(もはや名前の由来が…)

小爪谷ははじめスギ林の中を進んでゆくとやがて沢沿いのコースになります。

ここの沢もなかなか美しいんですね。

 

沢沿いを詰めてゆくと足元にたくさんのホソバナコバイモが咲いていました。

ホソバナコバイモ(ユリ科)

これも尽くすショウジョウバカマと並んで早春の可憐な花ですね。

どちらも結構長く咲いているしいわゆる「スプリングエフェメラル」ではありませんが、脊振のスプリングエフェメラルという方もいます。

ちなみにホソバナコバイモ…細花の小さな貝母…ホソバナ-コ-バイモという名前です。

バイモ(貝母)とはバイモユリとかアミガサユリと呼ばれる中国原産の花でこのバイモの仲間ということになります。

シジュウカラ(シジュウカラ科)

しばらく歩いているとかなり近くまでシジュウカラが近づいてきました。

シジュウカラは街中の街路樹なんかでも見かけますね。

「チチピー、チチピー」の鳴き声ですぐ気が付きますが、街ではだれも気にしてませんね。

かわいいから見上げればいいのに…

 

沢が小さくなって尾根に取り付いてすぐに小爪峠に出ます。

小爪峠

ここから左に進み急登に取り付くと猟師ヶ岩山です。

ここの標高は覚えやすい。893(やくざ)m

そんなにやんちゃな山ではありませんが(苦笑)

この辺りから岩がむき出しの尾根が続きシャクナゲの木がたくさん見られます。

株によりますが去年に比べると花芽の付きは良いようですので5月が楽しみです。

ツクシシャクナゲ
枝の先に着いた丸い芽が今年の春に咲く花芽です

さて、しばらく痩せた稜線を進んでいくと開けた岩場に出ます。

ここからマンサクがたくさん見られるはずです…が

わずかに咲いていたマンサクの花(マンサク科マンサク属)

いつも3月に入るとすぐに咲き始めるのですが、今年は花がかなり遅いようで3月20日になってもこんな感じです。(それとも今年はあまり花がつかないのかな?)

岩場を下りて鬼ヶ鼻の近くの群生地をのぞいてみましたが、やはりぽつぽつです。

花は錦糸卵のような花弁が面白いですね。

春になると「先ず咲く」からマンズ咲く⇒マンサク…だそうです。

 

思いのほかマンサクの花は少なかったので鬼ヶ鼻岩でしばらくぼーっと過ごして、直登コースを転がるように下山しました。

マンサクは少し残念でしたが、色々な春の花に出会えて…まあ、よかったと思います。

おまけの「花」を…

スギ(ヒノキ科スギ属)

花粉症の皆さんすみません。

指先でポンっとたたくと花粉が煙のように…

お粗末様でした。

3月20日山行

 

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