しろ鹿 脊振の山散歩

かけだし森林インストラクターのぶらぶら山散歩

金山 ブナの縦走路を散策(花編)

脊振の山々もすっかり初夏の雰囲気になってきました。

今回は稜線に咲く初夏の花を求めて佐賀県側から金山へ向かい、東の小爪峠まで散歩してみることにしました。

縦走路から金山を振り返る

山中地蔵の上の林道登山口から金山へ向かいます。

ここの登山道は途中石畳のようになっているんですが、江戸時代には山頂東側に佐賀藩の番所があったようなので昔から道が整備されていたのかも知れませんね。

ちなみに番所とは国境破りの犯罪者などを取り締まるためのものだったようです。

登山道の石畳

脊振山地は主に4種類の花崗岩で成り立つ山で、金山に限らずあちこちに大きな岩壁が見られます。

まるで城壁のような岩

登山口付近から稜線にかけてタツナミソウがぽつぽつと咲いています。

タツナミソウ(シソ科)
花の様子が北斎の絵の立波のように見えるから…?

ミヤマナルコユリ

稜線沿いにはミヤマナルコユリがたくさん見られますが、小さな草花で葉っぱの下に花がついているので気付かない人も多いかも

 

ベニドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)

この時期はこれ、ベニドウダンやシロドウダンが可愛い花を鈴なりにつけています。

ツクバネウツギ(スイカズラ科)

他にも脊振では稜線でツクバネウツギをたくさん見かけます。

おそらく花の形が羽根つきの羽根のようなのでついた名前でしょう。

最近街中でこれによく似たアベリアという花を見かけます。

ツクバネウツギ(タイワンツクバネウツギ)の園芸種ですので仲間の花ですね。

同じ「ウツギ」の名がついていますが、別の仲間でアジサイ科のコガクウツギも林道から山中までいたるところに咲いています。

コガクウツギ

コガクウツギはアジサイ科らしく装飾花をつけた咲き姿です。

ガクアジサイと同じで白い大きめの花びらのようなものはガク片が大きくなったものです。

蝶や蜂など色で花を識別する虫たちを呼び寄せるための生存戦略のひとつでしょう。

装飾花がつく花(花序)はアジサイ科やレンプクソウ科の植物で多いように思います。

 

ギンリョウソウ(ツツジ科)

これは先日も紹介した腐生植物のギンリョウソウです。

しつこく言いますがこれがツツジ科…先ほどのベニドウダンと仲間だそうです。

 

アマドコロ(キジカクシ科)

少し開けた沢沿いのヤブなどでアマドコロが咲いています。

ナルコユリにそっくりですが、花の付き方(アマドコロは少なめ)、茎の角で判別できます。

次はこの1週間前に同じ金山の滝川谷で見かけた花です。

ミズタビラコ(ムラサキ科)

沢沿いに時々見かける小さな花です。

花はヤマルリソウにも似ているように思いますが、こっちの方がもっと小さくて清楚に見えますね。

 

縦走路のブナの森

 

脊振山へ稜線が続いています

金山から小爪峠まで歩き、数十分で林道に下りますが、この時期は林道沿いに咲く花も楽しみです。

森の中に比べて日当たりがいいので、意外に珍しい植物に出会うこともあります。

これは平地でもよく見るかと思います

ノイバラ(バラ科)

ノイバラはよく見かけますが、いつも少ししおれた感じでみずみずしい花に出会ったことがありません。

たまたま時期が悪いのかなあ…

ウツギ(アジサイ科)

これも林道脇にたくさん咲いています。

ウツギです。

で相方といってもいいほどウツギと一緒に咲いているのがスイカズラです。

スイカズラ(スイカズラ科)

スイカズラはこの花の奥に蜜があってこれが甘くておいしいらしいですよ。

 

「ウツギ」と名前のつく植物はいくつかあって、ほとんどが茎や枝の中心(髄)が空洞になっているので「空木」と呼ばれるようになったそうです。

主にアジサイ科とスイカズラ科のものに分かれるようです。

アジサイ科のものは先ほど説明したように装飾花をつけるものが多いような気がします。

スイカズラ科は花が咲いてしばらくすると花の色が変わってくるものが多いようで、先ほどのツクバネウツギやこのスイカズラは同じ株で真白な花と黄色い花とがついていることがあります。

この特徴が最も顕著に出ているのがニシキウツギで、同じ木に白とピンクの花が同時につきます。(まあ、正確には白い花が時間とともにピンクに変色しているのですが)

そういった現象を見ると分類って正しいんだなと思いますね。

 

これも林道から山中までたくさん見かけます。

木が大きいので足下に落ちている白い花で気付くことが多いですね。

エゴノキ

エゴノキです。

この実はエグ味がひどく食べられないとのことで「エグ→エゴノキ」となったそうです。

実はサポニン(エゴサポニン)という成分が多く含まれており、このため食用にはできないけれど、石けんの代わりとして利用されていたそうです。

 

次は葉っぱの裏の毛の付き方などから多分ウラジロマタタビかな?と思うのですが、もしかしたらサルナシかも知れません。

ウラジロマタタビまたはサルナシ(いずれもマタタビ科)

秋を待って実を食べに来てみます。

ちなみに下の写真はマタタビの葉っぱですが、所々ペンキをかけたように白くなっています。

マタタビの葉

これは、花の時期になると蝶などの虫たちを呼び寄せるために葉の内部に気泡をつくって外側からは白く見えるようにしているそうです。

花自体は葉の下に小さく地味に咲いていますので、虫たちに向けた「花、咲いてます」の看板のようなものですね。

これも装飾花と同じように虫たちに受粉媒介をしてもらうための生存戦略です。

ただ、この写真の時点でまだ花はつぼみばっかりで全然咲いてないのですが…

「心をこめて 準備中」(笑)

 

イチヤクソウ(ツツジ科イチヤクソウ属)

林道の土手にはもうイチヤクソウも咲き始めています。
ちょっとアーティスティックに撮ってみました(笑)

 

ユキノシタ(ユキノシタ科)

これは1週間前に滝川谷の登山口付近に咲いていたユキノシタの花です。

秋に咲く仲間のジンジソウによく似た花ですね。

若葉は天ぷらにするとおいしいそうです。

食べたことあるような気がするけど…あんまり記憶にない。

 

次は虫・鳥編です。

 

2022年5月28日山行

 

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