キツネノカミソリの車谷からの続きです。
車谷を詰めると矢筈峠に出ます。
ここは気象台のレーダーに続く舗装道路が走っていますが、その脇にはブナやアカガシの森が広がっています。
特にこのあたりのアカガシの森はゼフィルス、キリシマミドリシジミの生息地として昆虫愛好家や研究者には有名なようです。
私はずいぶん以前にキリシマミドリシジミの雌らしき蝶を見たことはありますが、オスの美しい緑色の翅はまだ見たことがありません。
気象台道路の脇の森のの周りにはリョウブやノリウツギの白い花が咲き誇っています。
どちらも夏の花というイメージです。
ノリウツギはアジサイ科で白い装飾花が目立ちます。
茎を折ると髄からドロッとした糊状の樹液が出てくることから糊空木と呼ばれるようになったそうです。
リョウブは救済植物と言われており、飢饉のときなどに食料として利用されたという話もあります。
リョウブ=令法(法律)ということだそうですが…何でだろう?
今週もいろいろな樹木の実が見られました。
葉の裏に白い毛がたくさんあって歯の裏が真っ白に見えるのでウラジロノキ。
実まだ緑色でした。
葉をちぎるとゴマの香りがするゴマギは真っ赤な実をつけています。
実だけ見るとゴマギにも見ていますが、これはヤマシグレの実。
ヤマシグレは花の咲く前まではアジサイのように見えますが、花の感じやら少し違っていてガマズミの仲間ということですね。
山麓から稜線までたくさんのセミの鳴き声がします。
九州の平地ではあまり声を聞くことのないミンミンゼミも涼しい山の中では元気に鳴いています。
他にツクツクボウシ、アブラゼミ、ニイニイゼミ、ヒグラシ、エゾセミの声があちこちに聞こえます。
開けたミヤコザサのササ原でオニヤンマが縄張りパトロール中にちょっと休憩です。
縦走路の真ん中ではオサムシが食事中。
セミ(ヒグラシかな?)の死骸を無心に食べています。
ササ原の脇にはギボウシの花が咲き始めています。
コバギボウシは野生の花とは思えない気品のある花ですね。
ギボウシとは擬宝珠という橋の高覧や神社の構築物の先端に付けるネギ坊主みたいな装飾のことで、花のつぼみがこの擬宝珠に似ていることからついた名前だそうです。
図鑑では湿った草原に…となっていますが、比較的乾いた稜線に多く見かけます。
見た目より湿った環境なのかな?
脊振から金山への稜線は落葉広葉樹と照葉樹の森が交互に現れます。
少し標高が上がって乾いた尾根筋にミヤマウズラの花が咲き始めています。
ミヤマウズラはラン科の小さなかわいらしい花です。
森の落ち葉の上を危ないヤツが飛び回っていました。
キイロスズメバチは、オオスズメバチに比べ小さいハチですが、オオスズメバチに負けず攻撃性の強いハチです。
これから巣を作って子育てを始めますので10月頃にかけては十分注意が必要です。
山で休憩中に缶のオレンジジュースにスズメバチが入り込んで、飲もうとしたときに唇を刺されたという話もあります。
気をつけましょう。
これも面白い花です。
ジンバイソウ。
ランの仲間ですが、変わった花です。
これはまだ十分開花していない状態だと思います。
面白い花といえば…
ホトトギスの花は花柱、花糸が花から飛び出し外側に開いて…面白い形をしています。
初めて見たときはふざけてるのかと思いました。(笑)
これは、花弁が外側に反っていないことと、花柱に斑点がないことでヤマジノホトトギスかと思います。
名前の由来はこの赤い斑点が鳥のホトトギスの胸から腹にかけての模様に似ているということのようです。
最後に林道と登山口付近で見かけた虫たちを…
この写真では前肢に隠れているんですが、後翅に白っぽい紋があったのでモンキアゲハかと思います。
水がしみ出している暗い岩場で吸水する姿をよく見かけますが、これは林道の明るい場所で吸水していました。
あと、登山口付近のアスファルトの上でハンミョウを見つけました。
ハンミョウは「斑猫」と書きます。
肉食で昆虫を捕まえて食べます。
これはどうやら小バエのたかっているムシの死骸を横取りしたのか、このあとたくさんのはえに追いかけ回されていました。
翅の模様がきれいですね。
昔は街中の路地でもよく見かけました。
今回はリベンジ登山でしたが、毎回違う花や虫たちにも出会えるので、それもまあよしとしましょう。
2022年8月14日山行